日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
加熱鶏肉の揮発性成分におよぼす各種添加物の影響
天然調味料に関する研究(第7報)
石田 賢吾鍛治 義延
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1981 年 28 巻 12 号 p. 615-619

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抄録
優れたエキス系調味料の製造を目的として,金属封鎖剤などの添加物が鶏肉より生成するチキンフレーバーにどのような影響をおよぼすかについて,硫化水素と揮発性カルボニル化合物の生成量,クッキング中の油の酸化度の測定あるいは官能検査によつて調べた。
(1) 鶏肉のクッキング時のpHの上昇(pH2→7)に伴って,硫化水素の生成が増大すると共にチキンフレーバーも強化された。
(2) トリポリリン酸ソーダの添加により,硫化水素の生成量の増大と揮発性カルボニル化合物の生成量の減少がみられ,同時にチキンフレーバーも強化された。硫化水素生成量の増大は,トリポリリン酸ソーダによるpH上昇作用に起因するものとの予想された。
(3) クッキング時に銅イオン(Cu2+)が共存することにより,硫化水素の生成量が激減し,一方,揮発性カルボニル化合物とTBA値は増大した。これに伴いチキンフレーバーは殆んど生成されなかった。この現象は,トリポリリン酸ソーダの添加により殆んど完全に解除された。
(4) ピロリン酸ソーダ,クエン酸,フィチン酸などの金属封鎖剤は,いずれも揮発性カルボニル化合物の生成量とTBA値を減少せしめ,しかもチキンフレーバーを強化する作用を示した。これは,鶏肉中に含まれるプロオキシダントとしての金属類の封鎖作用に基くものと予想された。
(5) アスコルビン酸の添加により,硫化水素の生成量は増大したが,揮発性カルボニル化合物およびTBA値は低下し,同時にチキンフレーバーも強化,改良されることが明らかになった。
(6) 以上の結果より,鶏肉のクッキングによって生成するチキンフレーバーには,適量の硫化水素が生成することと,クッキング中の脂質の酸化防止が重要な因子になるものと予想された。
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© 社団法人 日本食品科学工学会

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