日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
乾のりの赤外・近赤外スペクトルの特性と帰属について
岩元 睦夫鈴木 忠直平田 孝野田 宏行魚住 純石谷 孝佑
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1983 年 30 巻 10 号 p. 544-551

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抄録

近赤外法を乾のり成分の非破壊分析法に使い品質評価法として確立させるため, KBr法及びATR法で得られた赤外スペクトルならびに1.1~2.5μmの範囲における近赤外スペクトルの帰属を行い,成分及び品質(等級)との関連から吸収の基本的特性を明らかにし次の結果を得た。
(1) 赤外スペクトルの主な吸収は6つの波長域で得られ,各々の吸収はアミドI,アミドII,アミドIII及びC-HならびにC-Oの基準伸縮振動に帰属される。
(2) 近赤外スペクトルは約35個の吸収からなり, C-H, N-H, O-H及びC=Oの倍音又は結合振動に帰属される。
(3) 赤外及び近赤外スペクトルのいずれからも,良質なのりほどたん白質が多く炭水化物が少ない分析結果を推察できる。
(4) 溶媒(アセトン)ならびに水抽出後の残渣試料の近赤外スペクトルを測定し,溶媒ならびに水による抽出性の検討を行い,吸収成分を定性的に推定した。
(5) 水分によるスペクトルの変化は遊離のO-Hによる吸収以外にもいくつかの波長域で見られ,この変化はのりの等級によらず水分に対し可逆的であった。スペクトルの変化は水和によるのり成分の構造変化が関与すると考えた。

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