日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
果実類の熟度と貯蔵条件に基づく糖組成の特徴
小宮山 美弘原川 守辻 政雄
著者情報
ジャーナル フリー

1985 年 32 巻 7 号 p. 522-529

詳細
抄録

本邦産果実類14属17種類の成熟期や貯蔵中(20±3℃)における糖含量及び糖組成の変化をHPLCで分析調査し,主要構成糖に基づく果実類の分類と糖組成の変化に対する考察を行った。(1) 果実の主要構成糖はショ糖,ブドウ糖,果糖及びソルビトールであった。
(2) 収穫適熟期の果実の糖組成から果実類を分類すると以下のようである。ショ糖型(全糖の50%以上を含む):カキ,モモ,ネクタリン,追熟後のバナナ,完熟期のスモモとメロン;還元糖型(全糖の50%以上を含む):(i) ブドウ糖型(果糖より25%以上多い):オウトウ,ウメ。(ii) 果糖型(ブドウ糖より25%以上多い):リンゴ,ナシ。(iii) 等量型(両者の差が25%以内):イチゴ,ナシ,ウンシュウミカン,トマト;平衝型(ショ糖,ブドウ糖,果糖含量の比が25%以内):イチゴ,スモモ;ソルビトール型:リンゴを除いたバラ科果実全てに含まれ,0.2~1.45%の含量を示す。
(3) 成熟期ではイチゴを除いて顕著な全糖分の増加がみられ,なかでもショ糖の増加率が大きいが,完熟期になると減少する果実もみられた。スモモとメロンは他の果実に比較してショ糖の増加は特に顕著であった。
(4) 貯蔵中の全糖分は,ウメ,スモモ,メロンのように減少率の大きい果実を除くとその変化は少なかった。構成糖の変化はショ糖の加水分解と思われるブドウ糖と果糖の増加がみられる果実が多く,カキは特に貯蔵後期に顕著であった。ナシ('長十郎')はブドウ糖のみが増加した。ウンシュウミカンではショ糖の著しい増加がみられた。一方ウメは還元糖,スモモとメロンは構成糖の全てが減少した。
(5) ソルビトールは成熟期に増加し,貯蔵中で減少した。

著者関連情報
© 社団法人 日本食品科学工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top