日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
豆乳の膠状的安定性に及ぼすCa2+添加の影響について
難波 和美長沢 太郎
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1986 年 33 巻 11 号 p. 745-751

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抄録

豆乳にカルシウムを強化する目的で,豆乳の膠状的安定性に及ぼすカルシウム塩の影響について,遠心分離による可溶性窒素の減少率(%),pHおよび粘度などの諸点から検討した.また,豆乳のカルシウム塩による複雑な凝固現象解明のために,7Sおよび11Sグロブリンの影響についても併せて検討し,以下に示す主要な結果が得られた.
(1) 豆乳および7S, 11Sグロブリン溶液に対して最も強い凝結力を示したものは供試塩中,塩化カルシウムであり,以下硫酸カルシウム,クエン酸カルシウム,リン酸カルシウムの順であった.
(2) 7Sおよび11Sグロブリン溶液のCa2+による分散性は緩衝液のpHの上昇により向上した.
(3) 安定剤として20mMリン酸水素2ナトリウムおよび20mMクエン酸ナトリウムを豆乳に添加後,19mMの塩化カルシウムを強化しても沈殿は生じなかった.一方リン酸塩の場合,ピロリン酸ナトリウムでは15mM,トリポリリン酸ナトリウムでは10mMで沈殿防止に有効であった.従ってリン酸塩の場合,リン酸の鎖長の増加により少量のモル濃度でカルシウムによる豆乳の分散性が改善された.
(4) 20mMクエン酸ナトリウム,20mMリン酸水素2ナトリウム,15mMピロリン酸ナトリウム,10mMトリポリリン酸ナトリウムをそれぞれ添加した豆乳に19mMの塩化カルシウムを加え,4℃で1週間貯蔵した際,タンパク質やカルシウムの凝固,沈殿は認められず安定であった.

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