日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
産卵鶏の鶏皮および鶏肉の脂肪酸組成ならびにコレステロール含量に及ぼす飼料油脂の影響
平田 明弘西野 松之木村 貞司大武 由之
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1986 年 33 巻 7 号 p. 480-486

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抄録
単飼ケージで,産卵鶏に大豆油,ココヤシ油,ラードあるいは牛脂を配合した飼料を与えて飼育し,50日後に屠殺した.飼料油脂が鶏体組織の脂肪酸組成ならびにコレステロール含量に及ぼす影響を調べるため,各試験鶏から腿肉,胸筋および皮を採取して分析に供した.
(1) 大豆油を与えた産卵鶏の皮の脂質ならびに腿肉や胸筋の総脂質および中性脂質には18:2が極めて多く,ココヤシ油を与えると,これらの脂質には12:0や14:0が著しく多く含まれ,飽和脂肪酸含量も多かった.ラードを与えた鶏の皮脂質や筋肉の総脂質および中性脂質は,牛脂区のものに比べて,18:0が少なく18:2が多い傾向があったが,この両区の脂質は類似した脂肪酸組成を有していた.
(2) ラード区と牛脂区は大豆油区やココヤシ油区に比べて,皮ならびに筋肉脂質に18:1が明らかに多かった.したがって,それぞれの飼料油脂を構成する主要脂肪酸は,かなりよく鶏体組織に取り込まれ,それら組織脂質は飼料油脂の脂肪酸組成を反映した脂肪酸パターンを示していることが認められた.
(3) 鶏や筋肉脂質のリン脂質画分は,その中性脂質画分に比べて18:1が少なく,18:0ならびに20:4や22:6などの高度不飽和脂肪酸を顕著に多く含んでいて,両脂質画分は脂肪酸組成に大きな差異があった.しかし,飼料油脂の違いによる鶏体脂質の脂肪酸組成の変動は,リン脂質画分におけるよりも中性脂質画分において顕著であった.
(4) 皮および腿肉の総コレステロール含量(Chol値)は,牛脂区のものが他の試験区のものより幾分多いと見られたが,調査した皮,腿肉および胸筋のいずれにあっても,飼料油脂区の間でChol値に有意な差は認められなかった.しかし上記の組織の間ではChol値に明らかに有意差が認められた.皮,腿肉および胸筋のChol値を酵素法によって測定したところ,その平均値は新鮮物中でそれぞれ91, 66および51mg%であった.
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