日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
豆乳の品質に及ぼす生しぼり温度の影響
浅野 三夫大久保 一良山内 文男
著者情報
ジャーナル フリー

1989 年 36 巻 4 号 p. 318-324

詳細
抄録

豆乳への固形分移行率,主成分含量,配糖体成分,リポキシゲナーゼ活性および粘性に及ぼす生しぼり温度の影響を調べ,生しぼり工程の最適条件を検討した.その結果,子葉から豆乳へ固形分移行率は30℃以上で,全粒から豆乳への固形分移行率は50℃で最大値50%にそれぞれ達し,その粗蛋白質,粗脂肪,糖質の組成比は生しぼり温度と関係なくほぼ一定していて,それぞれ44~46%, 19~20%, 24~26%であった.不快味に関係する豆乳の配糖体画分量は, 50℃以上の加熱により増加し始め, 95℃での全粒豆乳で約10%,子葉豆乳で約8%に達した. TLCとHPLCで豆乳からの配糖体画分を分析した結果,全粒豆乳からサポニンAとBグループ成分が,子葉豆乳からBグループ成分がそれぞれ検出され,その組成に及ぼす生しぼり温度の影響はみとめられなかった.不快臭と関係する豆乳リポキシゲナーゼの50%失活温度は,そのアイソザイムL1が68℃, L2が60℃, L3が58℃であった.またその生成n-ヘキサナール量は60℃の豆乳で約50%減少した.さらに生呉と生豆乳の粘性に及ぼす昇温・冷却の影響を調べた結果,昇温と共に粘性が急激に低下し, 60℃でほぼ平衡に達した.以上の結果から, 50~60℃が豆腐製造における生しぼり工程の最適温度範囲であるものと判断した.

著者関連情報
© 社団法人 日本食品科学工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top