塩漬けによる大根のヒドロキシ桂皮酸類の変化をHPLC分析により調べた.生大根から抽出されたヒドロキシ桂皮酸類の大部分はp-クマロイルリンゴ酸で次がフェルロイルリンゴ酸であり,遊離態のヒドロキシ桂皮酸(p-クマール酸)の量は抽出した総ヒドロキシ桂皮酸の2%以下だった.短期間(7日間)の塩漬け大根では総ヒドロキシ桂皮酸量が増加し,中でも遊離ヒドロキシ桂皮酸の増加率が高かった.長期間(2及び8ヵ月)の塩漬け大根では,遊離のヒドロキシ桂皮酸(p-クマール酸,フェルラ酸,コーヒー酸)が主要なものとなり,分離した総ヒドロキシ桂皮酸量に占める割合は2ヵ月貯蔵大根で90%前後,8ヵ月貯蔵で98%になった.
生大根で主要成分であるエステル態ヒドロキシ桂皮酸類のほとんどは,塩漬け中に加水分解されて遊離態のヒドロキシ桂皮酸類に変わるものと考えられる.