日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
連続式微小変形多重バイト試験法によるパンの貯蔵にともなう物性変化の検討
辻 昭二郎遠藤 克己
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1992 年 39 巻 1 号 p. 25-35

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抄録

家庭用自動製パン機で製造した食パンについて,加水量やでん粉質の添加などの条件を変えて,食パンの貯蔵にともなう物性変化を連続式微小変形多重バイト試験法などで検討した.
(1) 食パンの貯蔵(常温および冷蔵)にともなうみかけの硬さの変化は,板状プランジャーを用いた連続式微小変形多重バイト試験法のバイト率(10~35%)とプランジャーのプラスの仕事量との関係を示す一次式の勾配で明瞭に示された.
(2) 小麦粉に20%のポテトフレークを置換添加した食パンにおいて,一定の範囲で加水量を増加させると,貯蔵(老化)にともなうクラムのみかけの硬さの増加が少なくなることが数字的に示された.
(3) 食パンの組織の老化にともなうクラムの回復力のバイト率(変形の程度)にともなう微細な変化も,連続式微小変形多重バイト試験法の2バイト型の同一バイト率におけるプランジャーの仕事量の比で比較できる.
(4) 食パンのクラムの回復力の差は,バイト率と1回目のバイトのプランジャーの仕事量に対する特定のバイト率におけるプランジャーの仕事量の比の値との関係を示す一次式の勾配で比較できる.貯蔵にともない食パンのクラムの組織の老化が進むとこの勾配の値は小さくなった.
(5) 食パンの液状試料の多重バイト試験法による各種のパラメーターの値の比較により,食パンの貯蔵にともなうでん粉の老化による物性変化(液状試料のみかけの粘度の低下など)を明瞭に示すことができる.これらの変化はパンを口腔内でだ液と共にそしゃくした時の物性変化の解析にも有用であると考えられる.

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