日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
大豆リゾリン脂質の添加による食品用界面活性剤の物性改良
藤田 哲鈴木 一昭
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1992 年 39 巻 2 号 p. 151-160

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抄録
リゾリン脂質と食品用の界面活性剤との混合によって起こる相乗的な界面活性の向上などについて検討した.
(1) 供試した食品用界面活性剤は, HLBの高いポリグリセリン脂肪酸エステルを除くと,水溶性がやや低く耐塩性や対酸性に乏しいが,比較的少量のリゾリン脂質の添加によって混合物の水溶性,耐酸・耐塩性が向上した.
食品用界面活性剤/大豆リゾリン脂質混合物の界面活性については,(2)表面張力低下にやや大きな相乗作用があり,(3)浸透ぬれ,油脂のO/W乳化,微粒子分散,油溶性物質の可溶化についてある程度の相乗効果またはリゾリン脂質の性質への類似が認められ,少量の大豆リゾリン脂質添加によって活性が強まった.しかしその程度は大豆リゾリン脂質の活性の水準を越えなかった.(4)耐酸・耐塩性向上の効果は,酸や食塩を含む水溶液中への油脂の安定乳化に有効に利用できた.
以上の現象の成因は,比較的親水性の低い食品用界面活性剤の大型のミセルは,水和力の大きいヘッドグループをもったリゾリン脂質が加わることによってミセルが小型化し,混合物は後者の性質に近い界面化学的性質を持つに至るためと推定した.このようにして食品用界面活性剤は大豆リゾリン脂質との併用によって,その応用範囲を拡大できるものと考えた.
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