1993 年 40 巻 11 号 p. 814-823
大豆タンパク質の酸凝固性を応用してのスダチ,ユズ,レモン,カボスの柑橘生鮮果汁有機酸および苦汁成分含有梅酢の豆腐製造用凝固剤としての可能性について,硫酸カルシウムを使用した市販豆腐を対照区として物性を中心に製品品質を比較検討した.製造法は大規模機械法に準じた.各生鮮果汁の添加は,豆乳重に対して1.0~3.0%とした. 1.0~2.0%添加区では総合的な食品物性度はやや不足気味となり, 3.0%添加区は良好な食品物性度を呈した.生鮮果汁を凝固剤とした豆腐の凝固効果(速度)は添加率が高まれば促進され,生鮮果汁pHに影響され,強酸下で効果は高まり,一方,強酸かつ苦汁成分を併合する梅酢では一層凝固効果は促進された.凝固効果が高まれば製品豆腐の食品物性度(硬度,進入度,弾力度,切断度)は高まり,市販豆腐や対照区豆腐と大差なく,全体的にソフト感を有した.生鮮果汁3.0%添加区が最良で,とくに,梅酢,ユズ区は良質な製品豆腐の製造が可能となり,次いでスダチ,カボス,レモンの順となり,生鮮果汁pHの強酸性とほぼ一致した.豆腐表面の色調は,数値的には市販豆腐や対照区豆腐と差を生じたが,肉眼的には極めて少差であった.橘生鮮果汁を凝固剤としての豆腐製造は食品物性面より判断すれば十分可能であった.