日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
オカラから検出された塩基性7Sグロブリンとその分離法
浅野 三夫遠藤 いずみ山内 文男
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1993 年 40 巻 5 号 p. 323-330

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抄録
大豆種子中のどの蛋白質とも相同性を示さない独特な蛋白質である塩基性7Sグロブリン(BG)が,オカラ残査中に検出されたので,それらの分離抽出法を検討し,新しい調製法を試みた.
(1)未加熱および加熱オカラ水洗残査からの水抽出物を電気泳動分析した結果,いかなる成分も検出されなかった.
(2)0.1%SDS,6M尿素溶液抽出物においては,未加熱のオカラからは1本の塩基7Sグロブリンのバンドが検出されたが加熱オカラからは何も検出されなかった.しかし加熱オカラの場合,同溶液にメルカプトエタノール(0.02M)を添加して抽出することによって塩基性7SグロブリンのサブユニットであるHMWSとLMWSの2本のバンドが検出された.
(3)未加熱オカラ塩基性7Sグロブリンの抽出におよぼす各抽出剤(NaCl,尿素,SDS),その濃度,pHおよび抽出温度の影響を調べた結果,夫々NaCl0.3M以上,尿素1M以上,SDS0.1%以上,pH8以上,抽出温度は50℃以下の条件で抽出されることが明らかになった.
(4)従って,塩基性7Sグロブリンはオカラ中の成分と非共有的な結合をして存在していることが示唆された.
(5)抽出温度60℃以上では塩基性7SグロプリンのSH基がお互にS-S結合を起こして沈でんするか,又はオカラ中の成分とS-S結合を起こして抽出されないことが明らかになった.(6)オカラから調製した塩基性7SグロブリンをCM-セファロースCL-6Bにかけ得られた2つの画分(F1とF2)のHPLC分析を行った結果,それぞれ,主に85kDaと42kDaの分子量をもつものであった.
(7)それらの各画分(F1とF2)を解離系の電気泳動分析の結果,全く同一のバンドが検出され,F1は二量体,F2は単量体を形成していることが示唆された.
(8)対照に従来の調製法や脱脂大豆粉水洗残査からも調製を試み比較した結果,工程の容易さ,収量および再現性においてオカラからの調製法がすぐれていた.
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© 社団法人 日本食品科学工学会

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