日大医学雑誌
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原著
咽頭の診察所見 (インフルエンザ濾胞) の意味と価値の考察
宮本 昭彦渡辺 重行
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2013 年 72 巻 1 号 p. 11-18

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抄録

2007 年に,宮本は,咽頭後壁を丹念に視診する事により,インフルエンザ濾胞を発見し,インフルエンザを早期に診断する事が可能である事を示した19).2009-2010 年の A/H1N1 2009 死亡者は,米国で約12,500 人に対して,日本では 198 例のみで (死亡率:約1/25),世界各国の中でも,日本での死亡率が非常に低かった.本邦の例では,発症後 12 時間以内に 3 割,24時間以内に 7 割,48 時間以内に 9 割がノイラミニダーゼ阻害薬を開始していたが,他国では 48 時間以内の同薬剤投与は 1 割である.早期診断と適切な治療の開始が生死を分けていると言える.Miyamoto らは,2009 年 8-10月の A/H1N1 2009 の 23 例について,観察者間のデータ信頼性 (κ) を示し,「インフルエンザ濾胞」 が従来の迅速検査に比べ感度・特異性も高い事を示した (第一期) 4).本稿では 2009 年 11 月から 2010 年 1 月 (第二期) のインフルエンザ患者 87 例について (第一期と第二期を合わせ110 例) 検討した.2 歳~82 歳 (17.7 ± 13.1 歳,中央値 14 歳) の患者が (発熱から受診までの時間が 1~48 時間,11.8 ± 8.4,中央値 12 時間),超急性期の 3 時間以内が16 例含まれる中で,インフルエンザの診断が可能であった.87 例中,初診日迅速検査陰性が 10 例,この内 8 例は初診から 2 日目に迅速検査が陽性となり,2 例は 3 日目に陽性となった.87 例中,初診日にインフルエンザ濾胞を認めない患者が 1 例あった.第二期の症例の中で,発熱から 3 時間以内という超早期の患者を診察するようになった結果,従来の Definitive influenza follicles よりも更に小さい微小な濾胞が観察された.インフルエンザ濾胞は,迅速検査が陰性の超急性期であってもインフルエンザの診断が可能であった.    理学的所見は,臨床検査・機器の進歩の中においても不変的に重要である.

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© 2013 日本大学医学会
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