2023 年 40 巻 2 号 p. 70-75
副甲状腺癌は副甲状腺腫瘍の中でも約1%と非常に稀な疾患である。これまで診断や治療において統一された見解がなかったが,近年,エビデンスが蓄積しつつある。臨床所見では,頸部に腫瘤を触知することや,画像検査で腫瘍径や縦横比(D/W比)が大きいこと,血清カルシウム濃度やintact PTHが一般的な原発性副甲状腺機能亢進症(Primary hyperparathyroidism:PHPT)と比べて高値であることなどが特徴である。病理組織学的に腺腫との鑑別はしばしば困難であるが,癌を示唆する所見として,脈管侵襲,神経侵襲,隣接する構造への局所侵襲,遠隔転移などが報告されている。また,近年,パラフィブロミンなどのバイオマーカーが診断に有用であることが示唆されている。治療は,初回手術で被膜を損傷しないよう完全切除することが望ましい。薬物療法は血清カルシウムを下げることで高カルシウム血症による症状を管理する目的で行われ,シナカルセトやエボカルセトなどのカルシウム感知受容体作動薬を用いる。手術不能の副甲状腺癌に対し放射線療法も試みられているがエビデンスに乏しい。