隈病院では中リスク乳頭癌には全摘と中央領域郭清を,リンパ節転移陽性例には外側領域郭清を行い,サイログロブリン(Tg)値による動的経過観察を標準としている。2005~22年に手術した4,030例を用いて標準以外の術式(片葉切除465例,外側郭清省略2,132例)による予後,合併症の差を後方視的に検討した。5,10,15年の無再発生存率は96.5,93.5,90.8%,癌特異的生存率は99.8,99.6,99.6%と良好で,≧55歳,cN1b,腫瘍径>3cmが再発高危険因子,癌死例は全て≧55歳であった。標準以外の術式による予後悪化はなかった。片葉切除の53.0%に甲状腺ホルモンが投与され,永続性反回神経麻痺に術式による差はなく,永続性副甲状腺機能低下症は全摘のみに3.5%で認められた。予後不良因子を持つ例では,TSH抑制しつつ動的経過観察ができる全摘を行う相応の意義があると考えられた。