甲状腺腫瘍の組織型や悪性度に関連した遺伝子異常の解明により,甲状腺細胞診検体を用いた遺伝学的検査が欧米を中心に広まりつつある。目的は主に細胞診で良悪性を断定できない結節のリスク分類だが,分子標的薬の検索を目的とした利用も期待されている。遺伝学的検査に用いる細胞診検体には,塗抹標本からの剝離検体,liquid-based cytology(LBC)検体,セルブロック検体の3種類がある。なかでもLBC検体は,作製が容易で核酸保存性も良好であるため,最も扱いやすいと思われる。しかし,腫瘍細胞含有割合を評価できないので,検体の一部から鏡検用のLBC標本を作製することが望ましい。本邦では,甲状腺細胞診検体を用いた遺伝学的検査は現時点で保険収載されておらず,行われていない。日本甲状腺学会は「甲状腺腫瘍に特化した国産NGSパネル検査の開発」を臨床重要課題に掲げている。これが成功し保険収載されれば,日常診療に用いられる日もそう遠くないと思われる。