抄録
本稿は、江原由美子の権力論に対して否定的な含意をもつテーゼを提示し、そのテーゼの意味するところを考察することを目的とする。まず、江原の議論をふまえて「権力(の存在)」の定義を行い、そのなかに含まれる「本意な選択」の解釈を最強意のものから最弱意のものまで定式化する。そして、センのリベラル・パラドックスを援用することで、センが前提した条件を採るかぎり、江原的な「権力」からの脱却が不可能であることを示す。つぎに、現実には選好の無制約という条件がみたされていないことを推測し、このことが、江原のいう「文脈」とどう関連しているかを考察する。最後に、フェミニズムにおける「権力」論的アプローチへ、疑義を投げかける。