抄録
急性期に再発を繰り返した非ヘルペス性急性辺縁系脳炎で, tacrolimusが奏効した5歳男児例を報告した. インフルエンザに罹患後, 意識障害と行動異常, 記憶障害, 感情障害で発症した. 髄液細胞数・蛋白の増加, 脳波の全般性徐波化, 血清抗グルタミン酸受容体抗体陽性所見から非ヘルペス性急性辺縁系脳炎と診断した. ステロイドパルス療法, γグロブリン大量療法で一時的に症状は消失したが, 髄液蛋白異常高値は持続し, 3回再発した. Tacrolimusを投与したところ, 髄液所見は正常化し, 1年以上再発なく良好に経過している. 本例では髄液蛋白が病勢の指標であった. 非ヘルペス性急性辺縁系脳炎にtacrolimus治療を行った初の報告である.