脳と発達
Online ISSN : 1884-7668
Print ISSN : 0029-0831
ISSN-L : 0029-0831
症例報告
経腸栄養で改善したDuchenne muscular dystrophyに合併の上腸間膜動脈症候群
野崎 章仁熊田 知浩柴田 実林 安里日衛嶋 郁子舞鶴 賀奈子横山 淳史藤井 達哉
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 48 巻 1 号 p. 37-40

詳細
抄録

 Duchenne muscular dystrophy (DMD) の消化管合併症として, 急性胃拡張, 上腸間膜動脈症候群superior mesenteric artery (SMA) syndrome, イレウスや便秘等が知られている. 我々はSMA症候群を呈し, elemental diet (ED) チューブによる経腸栄養のみで改善したDMDの1例を経験したため報告する. 症例は16歳男子. 2歳時にDMDと診断. 11歳時より独歩不能にて車いす導入. 14歳時より脊椎前弯・側弯の増悪あり. 15歳時に呼吸不全により夜間の非侵襲的陽圧換気療法が導入された. 呼吸不全の進行とともに8カ月間に体重は40.3kgから33.4kgへ減少した. 頻回嘔吐と吐血を認めたため入院となり, 画像検査よりSMA症候群と診断した. EDチューブによる経腸栄養を5カ月間行い, 体重が32.7kgから36.1kgまで増加し, SMA症候群は改善した. その後胃瘻造設を行い, 再燃はない. SMA症候群は上腸間膜動脈と腹部大動脈とによって十二指腸水平脚が圧迫され, 通過障害をきたす疾患である. 発症要因は体重減少による十二指腸周囲脂肪組織の減少や腰椎前彎の増強がある. 自験例でSMA症候群を生じた原因として, 脊椎前弯の進行に加えて, 急激なやせによる十二指腸周囲脂肪組織の減少が考えられた. DMDでのSMA症候群の際, 経腸栄養による体重改善をまず試みるべきである.

著者関連情報
© 2016 一般社団法人日本小児神経学会
前の記事 次の記事
feedback
Top