脳と発達
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48 巻, 1 号
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巻頭言
総説
  • —地域で重度の障害児者を支える—
    三浦 清邦
    2016 年 48 巻 1 号 p. 5-9
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/26
    ジャーナル フリー
     重症心身障害児者 (以後, 重症児者) 医療の4つの魅力について私見を述べた.
     1. 重症児者と家族の成長を喜び合える. 本人も家族も成長し, 充実した人生を歩んでいる姿を見るとき, 報われたと実感する. 2. 頼られる・感謝される喜び. 家族から信頼を得て, 感謝の言葉をいただくとき, やりがいを感じる. 3. 工夫の医療・チーム医療の醍醐味. 予防的腕頭動脈切離術の成功は達成感があった. 4. 社会貢献できている実感. すべての人が生きやすい国づくりに貢献できる. これらの魅力を伝えるべく, 名古屋大学では家族参加型の重症心身障害児者医療教育を実践している. 重症児者医療の魅力を多くの医師に味わってほしいと思う.
原著論文
  • 赤池 洋人, 近藤 英輔, 河野 美奈, 加藤 敦
    2016 年 48 巻 1 号 p. 10-13
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/26
    ジャーナル フリー
     【目的】メラトニン受容体に特異的に作用し自然な睡眠をもたらすramelteonを脳波検査時に使用し, 脳波時の催眠薬としての有効性を検証した. 【方法】2010年1月から2012年7月の間に川崎医科大学病院小児科で脳波を受けた523人の患者における862回の脳波検査を後方視的に検討した. 主治医の判断で脳波検査時に睡眠導入できないと考えられた場合は, 患者保護者の同意を得て催眠薬の投与を行った. 薬剤投与量はramelteon 8mg錠 (7歳未満0.5錠 (粉砕), 7歳以上1錠), triclofos sodium (以下TS) 0.7ml/kg/回, chloral hydrate (以下CH) 30~50mg/kg/回を投与とした. TSを用いて睡眠導入が困難な場合には, 主治医の判断でCH坐薬を追加した. 【結果】睡眠の成功率は, 催眠薬なし群85.7%, ramelteon投与群95.2%, TS投与群96.3%, CH投与群97.3%, TS+CH投与群90.6%であった. 副作用に関しては, ramelteon投与群0%, TS投与群52.2%, CH投与群38.7%, TS+CH投与群66.7%であった. 【結論】催眠薬なし群と比較しramelteon群は有意に睡眠を導入することができた. また有害事象の発生率は他の催眠薬投与群よりもramelteon群で有意に低く, ramelteonは, 脳波検査時の催眠薬として有用であった.
  • 小寺澤 敬子, 岡田 由香, 宮田 広善
    2016 年 48 巻 1 号 p. 14-19
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/26
    ジャーナル フリー
     【目的】兵庫県姫路市において1983年から2007年に出生した脳性麻痺児について, 疫学的, 臨床的推移を検討する. 【対象・方法】25年間を5年毎に5期 (Ⅰ~Ⅴ期) に分けて診療録をもとに後方視的に調査をした. 【結果】出生1,000に対しての発生率は, 1.4, 2.0, 2.2, 2.9, 2.0とⅣ期までは増加したが, Ⅴ期で減少した. 原因として最も多かったのは脳室周囲白質軟化症で, 早産児の脳性麻痺の主たる原因であった. 発生率が最も高かったⅣ期では, 多胎出生が双胎, 品胎ともに最も多く, 発生率増加の一つの要因と考えられた. 後障害の重症度については, 2極化の傾向を示した. 【結論】脳性麻痺発生の推移は周産期医療の変化が関係していると考えられる.
  • —喉頭気管分離術との比較から—
    大島 早希子, 落合 幸勝, 有賀 賢典, 早川 美佳, 菅野 雅美, 竹内 千仙, 三枝 英人, 今井 祐之, 浜野 晋一郎
    2016 年 48 巻 1 号 p. 20-24
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/26
    ジャーナル フリー
     【目的】誤嚥防止術である声門閉鎖術の効果と合併症について, 喉頭気管分離術と比較し後方視的に検討した. 【方法】対象は1994年~2011年の間に声門閉鎖術または喉頭気管分離術Lindeman原法 (以下喉頭気管分離術) を施行された重症心身障害児 (者) 各々8症例と16症例で, 診療録から感染症罹患回数, 手術に伴う入院期間, 術後合併症, カニューレフリーの割合を調査した. 【結果】感染症罹患回数は両群で同様に減少し, 二つの術式の誤嚥防止効果は同等であった. 声門閉鎖術は喉頭分離術に比較し, 入院日数が短く, カニューレフリーとなる割合が高かった. 【結論】重症心身障害児 (者) の誤嚥に対し, 声門閉鎖術は喉頭気管分離術と同等の効果があり, 負担軽減につながる術式だと考える.
  • 水口 浩一, 師田 信人, 久保田 雅也
    2016 年 48 巻 1 号 p. 25-28
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/26
    ジャーナル フリー
     【目的】脊髄髄膜瘤のキアリ奇形Ⅱ型による呼吸合併症は, 乳幼児期の生命予後にとって重要である. その臨床像を明らかにするため, 診療録を用いた後方視的検討を行った. 【対象】2002年10月~2013年7月に当センターで髄膜瘤修復術を施行後, 継続して経過観察した50例. 【結果】最終経過観察時の年齢は4カ月~11歳2カ月で, 呼吸合併症は12名 (24%) で認め, 全例に水頭症とキアリ奇形Ⅱ型の合併を認めた. 発症時期は生後6カ月以内で, 特に生後2カ月以内が多かった. 呼吸合併症の種類は, 上気道閉塞6例, 睡眠時呼吸障害10例, 息止め発作10例で, 多くの症例は複数の呼吸合併症を有していた. 睡眠時呼吸障害では, 睡眠時無呼吸が6例, 中枢性低換気が4例であった. 予後は, 11例に上位頚椎減圧術を施行し, 術後5例で改善した. 術後改善しなかった症例のうち, 上気道閉塞例の1例では気管切開を要し, 中枢性低換気例の3例は気管切開下在宅人工呼吸を要した. 息止め発作は, 減圧術の有無にかかわらず, 経過とともに全例で改善し, 呼吸合併症例では死亡例は認めなかった. 【結論】乳幼児期の呼吸合併症を有する脊髄髄膜瘤は, 外科的減圧術に加え適切な呼吸管理を行えば生命予後は改善する. 症候性となったキアリ奇形Ⅱ型の早期発見には, 生後6カ月までの注意深い経過観察が大切である.
症例報告
  • 森田 佳代, 阿部 裕一, 板野 篤志, 武者 育麻, 古賀 健史, 山崎 太郎, 山内 秀雄
    2016 年 48 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/26
    ジャーナル フリー
     小児への使用が稀となったchloramphenicol (CP) 投与によって治癒し得た難治性細菌性髄膜炎例を報告し, その小児適応について考察する. 症例は生後2カ月から1歳4カ月に細菌性髄膜炎と診断された4例で, 起炎菌はインフルエンザ菌3例, 肺炎球菌1例であった. 発症時の薬剤感受性試験で高感受性が示されたceftriaxone, meropenemないしpanipenem/betamipronは有効であったがいずれの症例も髄膜炎の再燃を認めたため, CP (100mg/kg/日) が第11病日から第58病日に投与が開始となり9日間から19日間投与された. CP投与後翌日から4日目までに解熱し治癒が確認された. 有害事象としては, 2例においてCP投与後に軽度の貧血が認められ, 投与中止により速やかに改善した. いずれの症例も神経学的後遺症は認められなかった. CPは小児難治性細菌性髄膜炎に対する抗菌薬の一つとして選択しうると考えられた.
  • 大石 拓, 佐藤 哲也, 松下 憲司, 武市 知己, 村上 信行, 藤枝 幹也
    2016 年 48 巻 1 号 p. 34-36
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/26
    ジャーナル フリー
     症例は, 在胎37週0日, 2,114gで出生した男児. 母親は, 妊娠32週から羊水過多を指摘された. 妊娠37週0日に破水し, 胎児徐脈になり, 緊急帝王切開で出生した. 出生時, 筋緊張は著しく弱く, 全身チアノーゼを認め, 心拍は聴取せず気管内挿管後, 人工呼吸管理を行った. その後, 日齢10に乳び胸を合併した. 生後3カ月時に施行した右上腕二頭筋の筋生検像で, ほぼ全ての筋線維がperipheral haloを有しており, MTM-1遺伝子変異を確認し, X-linked myotubular myopathyと診断した. 生後5カ月時に気管切開術を施行し, 1歳5カ月時に在宅医療に移行した. 新生児の乳び胸に際しては, 本疾患も念頭に置くべきと考えられた.
  • 野崎 章仁, 熊田 知浩, 柴田 実, 林 安里, 日衛嶋 郁子, 舞鶴 賀奈子, 横山 淳史, 藤井 達哉
    2016 年 48 巻 1 号 p. 37-40
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/26
    ジャーナル フリー
     Duchenne muscular dystrophy (DMD) の消化管合併症として, 急性胃拡張, 上腸間膜動脈症候群superior mesenteric artery (SMA) syndrome, イレウスや便秘等が知られている. 我々はSMA症候群を呈し, elemental diet (ED) チューブによる経腸栄養のみで改善したDMDの1例を経験したため報告する. 症例は16歳男子. 2歳時にDMDと診断. 11歳時より独歩不能にて車いす導入. 14歳時より脊椎前弯・側弯の増悪あり. 15歳時に呼吸不全により夜間の非侵襲的陽圧換気療法が導入された. 呼吸不全の進行とともに8カ月間に体重は40.3kgから33.4kgへ減少した. 頻回嘔吐と吐血を認めたため入院となり, 画像検査よりSMA症候群と診断した. EDチューブによる経腸栄養を5カ月間行い, 体重が32.7kgから36.1kgまで増加し, SMA症候群は改善した. その後胃瘻造設を行い, 再燃はない. SMA症候群は上腸間膜動脈と腹部大動脈とによって十二指腸水平脚が圧迫され, 通過障害をきたす疾患である. 発症要因は体重減少による十二指腸周囲脂肪組織の減少や腰椎前彎の増強がある. 自験例でSMA症候群を生じた原因として, 脊椎前弯の進行に加えて, 急激なやせによる十二指腸周囲脂肪組織の減少が考えられた. DMDでのSMA症候群の際, 経腸栄養による体重改善をまず試みるべきである.
  • 杉山 延喜, 横山 淳一, 池上 真理子, 松田 晋一, 宮下 好洋
    2016 年 48 巻 1 号 p. 41-44
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/26
    ジャーナル フリー
     症例は15歳女児. 予防接種歴や先行感染の既往はなかった. サーフィン初級者で, 発症当日サーフィンの授業中に背部痛が出現し, その後急速に症状が進行した. 両下肢の脱力が出現し, 両下肢の弛緩性麻痺と知覚障害および膀胱直腸障害を認めた. 脊髄MRIにて異常信号域を認め, 脊髄梗塞による前脊髄動脈症候群と診断した. ステロイドパルス療法と免疫グロブリン大量静注療法を施行し症状は改善し, 後障害は認めなかった. 症例は急速な発症様式とMRI所見からsurfer’s myelopathy (以下SM) と診断した. SMはサーフィン初級者にみられる稀な疾患であるが, 近年報告が散見されており, その認知, 予防および早期対応が重要である.
  • 上野 弘恵, 西里 ちづる, 島津 智之, 渡邉 聖, 水上 智之, 小菅 浩史, 小篠 史郎, 野村 恵子, 木村 重美, 高橋 幸利
    2016 年 48 巻 1 号 p. 45-47
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/26
    ジャーナル フリー
     橋本脳症は甲状腺自己抗体陽性の自己免疫性脳症であり, 早期診断と免疫療法により治療可能な疾患である. 我々は亜急性に進行するめまい・筋力低下・歩行障害を主訴とした橋本脳症の13歳男児例を経験した. めまいで発症し, その後四肢の筋力低下を自覚, 発症後約6カ月時には自立歩行不能となった. けいれんはなかったが脳波異常を認め, 脳血流SPECT (single photon emission computed tomography) で不均一な脳血流低下を認めた. 甲状腺機能は正常であったが抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体などの抗甲状腺抗体の上昇あり, 血清中抗N末端α-エノラーゼ (NH2-terminal of alpha-enolase; NAE) 抗体陽性で橋本脳症と診断した. 免疫グロブリン大量療法, ステロイドパルス療法により症状が改善した. 小児においても原因不明の神経・精神症状を呈す症例では橋本脳症を鑑別にあげる必要がある.
短報
  • 山田 桂太郎, 倉橋 宏和, 大萱 俊介, 倉橋 直子, 梅村 紋子, 河村 吉紀, 加藤 美穂子, 丸山 幸一, 長坂 昌登
    2016 年 48 巻 1 号 p. 49-51
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/26
    ジャーナル フリー
     脳浮腫を伴う急性脳炎・脳症に罹患した後, 脳萎縮に伴って硬膜下血腫が進行し, 血腫除去術が有効であった2例を経験した. 症例は1歳男児と4歳女児. 急性脳炎・脳症発症から約1カ月後の頭部MRI検査で, 脳萎縮を伴う軽度の硬膜下水腫・血腫を認めた. 神経症状はゆっくりと回復していたため, 硬膜下血腫は無症候性と考え自然消退を期待して経過をみた. しかし, それぞれ発症7カ月後と6カ月後には硬膜下血腫が拡大し脳実質を圧迫していたため, 血腫除去術と硬膜下腹腔シャント術を施行した. 両症例とも術後に神経症状のさらなる改善がみられた. 急性脳炎・脳症後の脳萎縮に伴う硬膜下血腫は慢性期に出血を反復し増大する可能性があるので, 神経学的所見の悪化がなくても画像検査を経時的に追跡する必要がある. 血腫が増大する場合は外科的介入の必要性について検討を要する.
  • 延時 達朗, 庵原 俊昭
    2016 年 48 巻 1 号 p. 51-52
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/26
    ジャーナル フリー
     症例は1歳2カ月男児. 微熱出現の2週間後に体幹失調を来し受診. 急性小脳失調症が疑われるも運動機能は回復せず, MRI fluid-attenuated inversion recovery像の小脳虫部, 皮質の萎縮と高信号所見から小脳炎の慢性期と診断された. リハビリテーションにもかかわらず認知, 運動機能ともに後遺症を来した. 乳幼児期の小脳炎では, 病初期には潜在的に重症であること, 回復期に認知機能障害を来すことに留意して診療にあたることが重要である.
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