脳と発達
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症例報告
Acute disseminated encephalomyelitisとして加療されていたgliomatosis cerebriの男児例
所谷 知穂西内 律雄吉川 清志
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2017 年 49 巻 4 号 p. 267-270

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抄録

 急性散在性脳脊髄炎 (acute disseminated encephalomyelitis; ADEM) と診断・加療された後, gliomatosis cerebri (GC) と診断した10歳男児例を報告する. 9歳10カ月時, 長引く頭痛・嘔気を主訴に近医神経内科を受診した. 神経学的所見に異常はなく, 髄液検査にも異常所見を認めなかったが, 頭部MRI検査でびまん性に白質の異常信号を認め, ADEMと診断された. ステロイドパルス療法を3コース施行されたが, 症状は軽快・増悪を繰り返し, 白質の異常信号は残存した. 加療開始から1カ月後, 脳室の拡大傾向があり水頭症と診断され, 当院脳神経外科へ紹介され脳室腹腔シャント留置術を受けた. 術後は症状が一旦消失したが, 術後1カ月頃から症状が増悪し, 当科へ紹介された. 当科初診時は, 傾眠傾向で, 左注視時水平性眼振, 体幹失調を認めた. 頭部MRI検査ではT2強調画像 (T2WI), fluid-attenuated inversion recovery (FLAIR) 画像で側脳室から第四脳室にかけて脳室壁を裏打ちするように帯状の高信号域を認め, gadoliniumの造影効果は乏しかった. 開頭内視鏡下脳室内腫瘍生検を施行し病理検査でastrocytoma gradeⅢと診断され, 画像診断と合わせてGCと確定した. びまん性白質病変の鑑別診断として, GCは考慮する必要がある.

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© 2017 一般社団法人日本小児神経学会
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