2019 年 51 巻 1 号 p. 35-37
マイコプラズマは中枢神経合併症を認めることがあるが, 髄膜炎尿閉症候群の症例は検索する限り認めない. 症例は14歳男子. 発熱, 頭痛, 嘔吐が出現, 髄膜刺激症状を認め, 咽頭のマイコプラズマLAMP法陽性, 髄液細胞数と蛋白の増加より, マイコプラズマに関連した無菌性髄膜炎の診断で入院とした. Minocyclineを投与後尿閉が出現したため, 髄膜炎尿閉症候群と診断して, ステロイドパルス療法を追加した. 発熱, 頭痛, 嘔吐は改善したが, 傾眠傾向が出現した. 覚醒時脳波で徐波を認めたため, 髄膜脳炎と診断し, ガンマグロブリン療法を開始した. その後, 意識状態は改善し, 尿閉も12日間で軽快し, 後遺症なく, 退院した. 本症例はマイコプラズマに対する免疫応答により, 髄膜炎尿閉症候群, 髄膜脳炎を発症したと考えられた. マイコプラズマはself-limitedな疾患であり, 治療の効果と, 自然軽快との判別が難しい場合も多いが, 後遺症を残す重症脳炎の場合もある. 本症例の経験から, マイコプラズマに関連した髄膜炎尿閉症候群に対し, 早期のガンマグロブリン療法を考慮する必要があると思われた.