2019 年 51 巻 5 号 p. 303-308
【目的】慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー (chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy; CIDP) の臨床的特徴を後方視的に再考し, 診断の要点を探る. 【方法・対象】2か月以上進行する末梢神経障害で, 電気生理学的もしくは神経病理所見から脱髄を認め, CIDPと確定診断しえた8小児例を対象とした. 診療録より調査し, 障害部位から典型例, 遠位型 (distal acquired demyelinating symmetric; DADS) と非対称型 (multifocal acquired demyelinating sensory and motor; MADSAM) に分け臨床症状, 検査所見, 治療反応性を検討した. 【結果】典型例4例, 非典型例4例 (DADS 3例, MADSAM 1例). 全例で電気生理学的に脱髄所見が確認され, 3例では節性脱髄を認めた. 非典型例2例は髄液蛋白細胞解離と神経根腫大を共に認めなかった. 非典型例では, 典型例に比べ診断に時間がかかり (p=0.029), 遺伝性ニューロパチーとの鑑別に病理検査が有用であった. 治療反応性は全典型例, 非典型2例において免疫修飾治療により症状寛解を認めた. 【結論】小児の緩徐進行性の末梢神経障害ではCIDPの非典型例も鑑別に挙げ, その診断には電気生理学的な節性脱髄所見や病理所見が有用である.