脳と発達
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総説
自閉スペクトラム症 (ASD) 児の鎮静に際して必要な理解や配慮
黒神 経彦小倉 加恵子
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2021 年 53 巻 2 号 p. 105-110

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抄録

 自閉スペクトラム症 (ASD) 児の特性として, 慣れた生活環境が少しでも変わることや見通しが立たない状況は, 我々が思う以上に強い負担となり不安や恐怖心につながる. 医療機関の受診は非日常的な状況であり, ASD児は追い詰められた結果として, パニック・かんしゃくや自傷・他害に至ることがある. そのため, 年長児であっても不安や恐怖の軽減, 体動の抑制・最小化, 安全の確保を目的に各種検査 (CT, MRI, 脳波検査など) に先だって鎮静管理が行われることが多い. ASDの特性に目を向けずに, 健常発達の子ども同様の手順で鎮静を実施しようとすると, 子どもの不安や興奮が十分に収まらずに鎮静作業に難渋することが多く, 本人・家族からすると非常に大変でつらい思いをしたという否定的な感情を伴う体験になる. より適正に鎮静を進めるためには, まず 「特別な配慮が必要な子ども」 という認識を持ち, 子どもに検査手順の見通しをあらかじめ理解できるように伝えること, 普段と違う状況から生じる不安や恐怖心をできる限り軽減する配慮が非常に重要である. そのためには子どもの最大の理解者・味方である養育者の力を借りて, どういう子どもなのかそれぞれのケースにおいて前もって把握すること, 子ども・養育者とあらかじめ信頼関係を築くこと, 事前に得られた情報をもとに本人の特性に合わせたより細やかな対応・配慮を行うことが必要不可欠だと考える.

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© 2021 一般社団法人日本小児神経学会
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