2021 年 53 巻 2 号 p. 133-136
上斜筋麻痺では斜視, 複視, 頭位異常などの症状が出現する. 診断にはParks-Bielschowsky three-step testが使われるが, 3 stepsを満たさない場合や所見の評価が難しい場合もある. 斜視, 頭位異常が軽微の場合には所見として認識されず, 複視の原因となる他の全身性疾患の鑑別が必要となることもあり, 上斜筋麻痺の診断に苦慮する場合がある. 今回, 複視で発症した上斜筋麻痺に対して, 単眼視による頭部傾斜変化が他覚的診断に有用であったため報告する. 症例は13歳女子. 2年前より複視を自覚, 増悪し受診した. 右眼はわずかに外上方の斜位で, 眼球運動9方向に制限はなかったが全方向に複視を認めた. 眼瞼下垂はなかったが, 夕方に増悪する日内変動があった. 血液検査, 脳MRI検査, 神経伝導検査, テンシロン試験に異常はなく, 重症筋無力症, 脳腫瘍, Fisher症候群などは否定された. 左右の単眼視で頭部傾斜を比較すると, 健側である左単眼視で頭位は正中であるのに対し, 右単眼視で健側に頚部を傾ける代償性頭位の所見が顕著となり, 上斜筋麻痺と診断した. 眼科手術により複視は著明に改善した. 斜視, 頭位異常が軽微で上斜筋麻痺の診断に苦慮する場合には, 単眼視による頭部傾斜変化がBielschowsky徴候を強調し, 他覚的な診断に有用となりうると考えられた.