脳と発達
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症例報告
IQSEC2遺伝子の新規突然変異による発達性てんかん性脳症の男児例
田中 亮介黒田 真実竹口 諒福村 忍要 匡高橋 悟
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2021 年 53 巻 2 号 p. 129-132

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抄録

IQSEC2はXp11.22に位置し, シナプス後肥厚部に存在して興奮性シナプス伝達を調節するグアニンヌクレオチド交換因子 (GEF) をコードしている. この遺伝子変異は, 2010年にX連鎖性知的障害を有する家系で初めて同定されたが, その後に女性例や乳児期発症てんかんを合併する例も報告されており, 多彩で広い臨床像に関連していることがわかってきた. 我々は, IQSEC2エクソン1のフレームシフト変異NM_001111125.2 : c.693del [p. (Thr232Profs25)] によって, 最長型IQSEC2アイソフォームの全ての機能性ドメインを失っていると考えられた男児例を経験した. 患者は, 乳児期から筋緊張低下と斜視に気づかれ, 後に精神運動発達遅滞と自閉性障害が顕在化した. 脳MRI検査で, 軽度の脳萎縮と脳梁の菲薄化および側脳室周囲白質のT2高信号を指摘された. 2歳時よりミオクロニー発作が出現し, 強直間代発作, 非定型欠神発作も認めた. 発作間欠期脳波では全般性多棘徐波を認め, てんかん発作は薬剤抵抗性を示した. 4歳時に全脳梁離断術を受け, 転倒発作は消失し表情も豊かになった. しかし, 運動機能の改善はなく, 有意語の表出がない状態に変化はなかった. 臨床経過は, 発達性てんかん性脳症に合致しており, 多彩な発作型を有する難治性てんかん, 自閉性障害, 斜視, 特徴的な脳MRI所見を伴っていた. これらの所見は, IQSEC2変異に関連した最も重症な表現型と考えることができる.

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© 2021 一般社団法人日本小児神経学会
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