脳と発達
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<シンポジウム4:小児神経疾患の出生前診断up-to-date>
産科領域で行われる出生前診断の現状
土肥 聡
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2021 年 53 巻 5 号 p. 375-379

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抄録

 出生前診断とは, 妊娠中に胎児が何らかの疾患に罹患していると思われる場合に, その正確な病態を知る目的で検査 (出生前検査) を行い, これに基づいた胎児疾患の診断を指す. 出生前検査の主な対象疾患は, 胎児の先天性疾患の一部 (形態疾患や染色体疾患, 具体的には21トリソミー, 18トリソミー, 13トリソミーなど) である. 染色体数的異常を対象とした出生前検査を行う際には確定的検査 (絨毛検査, 羊水検査, 臍帯血検査) と非確定的検査 (超音波マーカー検査, 母体血清マーカー検査, コンバインド検査, 母体血を用いた新型出生前診断 (NIPT) に分類される. 確定的検査である絨毛検査, 羊水検査は染色体疾患の確実な診断ができるが, 流産・胎児死亡の危険性が絨毛検査で1%, 羊水検査で0.3〜0.5%, 臍帯血検査で1.4%とされる侵襲的検査でもある. そのため, その侵襲を最小限にする目的で開発されてきたのが非侵襲的検査であり, 胎児染色体疾患について心配し, 確定的検査を受けるか否かに悩む女性がその判断材料として受ける検査という位置付けで, 出生前検査の一つの選択肢として提示される.

 産科診療では, 超音波検査が出生前検査の一翼を担っており, 形態疾患を中心とする様々な疾患を出生前に診断して出産に備えることが児の予後改善に繋がっている. 一方で, 出生前に治療法がなく予後不良な疾患や染色体疾患などが疑われる所見が判明することがある. このような場合には, クライエントである妊婦や家族の不安や悩みに十分配慮した臨床心理的, 社会的支援を行うことが重要である.

 このように出生前検査においてはクライエントの自律的な選択を尊重するカウンセリングの実施, クライエントのプライバシー保護と人権の尊重, 不当な差別が起こらないように常に配慮することがカウンセリング担当者 (臨床遺伝専門医, 認定遺伝カウンセラー®など) に求められており, 当該疾患の診療経験が豊富な医師と協働しながらチーム医療を実践することが重要である. 本講演を通じて, 産科領域で行われる出生前検査の現状, 出生前検査で検出できる疾患, 出生前検査前のカウンセリングの重要性について概説する.

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© 2021 一般社団法人日本小児神経学会
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