脳と発達
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<企画シンポジウム6:難治性小児神経疾患の新生児スクリーニング国内新規導入の現状と課題>
副腎白質ジストロフィー
下澤 伸行
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2023 年 55 巻 3 号 p. 173-177

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抄録

 X連鎖遺伝形式にて男性で重篤な大脳型をきたす副腎白質ジストロフィー(adrenoleukodystrophy;ALD)は,無治療では発症後数年で寝たきりになることもあるが,発症早期の造血幹細胞移植により予後改善が期待される.そのため米国では男女,オランダでは男児のみを対象に極長鎖脂肪酸の増加を指標にした新生児スクリーニングが行われている.国内でも2021年4月より保護者の同意を得た新生児を対象に愛知県では男女,岐阜県では男児のみに有償での新生児スクリーニングを開始している.その中でALDでは予後の予測が難しいことに加え,スクリーニングの対象性別,検出されたレアバリアントの病的意義の評価,遺伝カウンセリングにおける臨床遺伝専門医に遺伝カウンセラー,臨床心理士も加わったチーム医療の整備,男性患者に対する小児神経,内分泌,移植専門医から成人以降のトランジションも視野にした長期フォローアップ体制の整備など様々な課題が抽出されている.今後,患者会や臨床遺伝,社会医学など幅広い領域での議論を経た上で公費負担も検討されて1人でも多くの患者の予後改善につながることが望まれる

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© 2023 一般社団法人日本小児神経学会
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