脳と発達
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総説
「朝起きることができない」思春期患者:睡眠医療の視点からみた現状,対応と課題
神山 潤
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2023 年 55 巻 6 号 p. 413-420

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抄録

 「朝起きることができない」に該当する英語表記は,International classification of sleep disorders version 3ではdifficulty(in morning)awakeningで,その邦訳は覚醒困難あるいは起床困難である.「朝起きることができない」は世界的に重要な思春期の睡眠関連課題とされ,調べ得た範囲では思春期世代の40~90%でこの訴えがある.不登校,成績不良,入眠前の電子機器使用,就床時刻の遅れ,飲酒,喫煙,抑うつ,sluggish cognitive tempo症状との関連が指摘され,アレルギー性鼻炎,アトピー性皮膚炎,長時間睡眠者,閉塞性睡眠時無呼吸症候群,睡眠・覚醒相後退障害,睡眠不足/睡眠不足症候群,特発性過眠症,精神科的疾患との鑑別も必要であることがわかった.本邦一般小児科医にとってcommon diseaseとなった起立性調節障害の身体症状項目にも「朝起きることができない」はある.しかし起立性調節障害の英文ガイドラインでは,「朝起きることができない」は覚醒困難ではなく寝床からの起き上がり困難を意味していた.「朝起きることができない」思春期患者への対応を文献的にまとめ,思春期の「朝起きることができない」の今後の課題として,睡眠衛生指導法(介入方法)のブラッシュアップ,睡眠を尊重する社会啓発,飲酒喫煙防止教育の充実,夜間のメディア機器使用対策,睡眠慣性/睡眠酩酊に関する研究,生体指標の検討の6点を挙げた.

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© 2023 一般社団法人日本小児神経学会
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