脳と発達
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<シンポジウム7:神経生理から読み解く小児神経疾患>
不随意運動の神経生理学
柏井 洋文
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2025 年 57 巻 4 号 p. 258-264

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抄録

 不随意運動を正しく診断するには,まず問題となっている動きを肉眼でしっかり観察し,パターンを同定し分類することが重要である.しかし肉眼やビデオ記録からの不随意運動の診断は,経験に基づく一方で,主観が排除できないことになる.そこで不随意運動の性状を客観的に定量化するため,また不随意運動の病態生理学的特徴を明らかにする目的で,神経生理学的検査が用いられる.

 まず不随意運動を分類するに際し,客観的評価法として表面筋電図が最も有用である.表面筋電図は,筋全体の活動を記録でき,肉眼的観察だけでは把握が困難な広範囲にわたる多数筋を同時に記録することが可能である.また不随意運動の中でもミオクローヌスに関しては,体性感覚誘発電位,C反射,そして筋放電をトリガーとして先行する脳波上の棘波を調べるjerk-locked back averaging法などが皮質性ミオクローヌスの評価に有用である.他に運動関連脳電位(movement-related cortical potentials;MRCP)は,随意性に関連する脳活動を記録することで,機能性神経障害との鑑別に有用であり,また経頭蓋磁気刺激(transcranial magnetic stimulation:TMS)を用いて皮質の興奮性を解析したりすることも不随意運動の病態生理を考察するうえで参考となる.

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© 2025 一般社団法人日本小児神経学会
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