抄録
若年型異染性白質ジストロフィーの一女児例を報告した.両親に血族結婚があり,父方曽祖母と母方曽祖父が姉弟であった.歩行開始は正常であったが走るのが遅く転び易かった.手先も不器用であった.小学校時代は体育は不得意で,学業成績も高学年になるにつれ低下していった.12才の時インフルエンザ罹患後運動能力が著しく悪くなった.13才頃より知能障害が目立って進行してきた.13才10ヵ月の入院時現症では,麻痺はないが動作は鈍く,腱反射減弱,靴下型の知覚低下が認められた.WISCでは言語性IQ102,動作性IQ77と動作面での遅れが目立った.検査所見では末梢神経伝導速度は運動・知覚共著明に低下.髄液蛋白増加.腎機能ではPSP,クレアチーン・クリアランスの低下が認められた.尿中および白血球中ary1-sulfataseA活性は著明に低下.母親も中等度の低下を示した.腓腹神経生検にてシュワン細胞胞体内に異染性を示す脂質の沈着が認められた.直腸生検では粘膜固有層および粘膜下層に,胞体内に異染性物質を含む多数の空胞細胞を認めた.患児の運動障害および知能障害は徐々に進行を続け,19才頃より臥床生活となり,全くの痴呆となった.