脳と発達
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てんかん発作のみを呈した小児脳腫瘍例の検討
岸川 秀実大本 堯史西本 詮
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キーワード: 脳腫瘍, てんかん, 小児
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1980 年 12 巻 1 号 p. 19-26

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抄録
痙攣発作を初症状とし, 脳圧亢進症状を認めず, かつ神経学的所見にも異常を認めなかった小児 (15才未満) の脳腫瘍手術例を6例経験したので症例検討および若干の文献的考察を加えた.
年齢は, 1-14才, 男性2例, 女性4例で, seizure typeは, 全例にgeneralized tonic seizureを認めた.Jacksonian seizureおよびfocal seizureは, いずれの症例にも認められなかった.seizureの初発から手術までの期間は, 3週間から3年間で, 脳腫瘍の診断確定までに比較的長期間を要している症例が多かった. 脳波上の特徴として, 全例にfocal slow waveを認め, 2例にfocal spikeを伴っていた. また, 診断的に注目されるのは, コンピューター断層撮影 (CT) で容易に脳腫瘍の存在が発見されることであり, 神経学的に異常所見を認めず, 痙攣発作のみを主訴とする小児例に脳腫瘍がこのように多く発見されるようになったのは, 近時のCT応用の結果である. 脳腫瘍の発生部位は, 前頭葉2例, 側頭葉3例, 中頭蓋窩1例で, 腫瘍の大きさは, 5-3109で, 発作の初発より診断確定までの期間は, 特に腫瘍の大きさとは関連がみられなかった. また, 腫瘍の種類にも特徴が認められなかった.
以上, 小児脳腫瘍においては, 痙攣発作に明らかな特徴を見出せないため, 日常診療に当って, 小児の痙攣発作をみた場合, 神経学的に異常を認めなくとも, 脳波検査に加えてCT検査を行ない, 器質性疾患の有無を早期に診断することが肝要であろう.
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© 日本小児小児神経学会
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