抄録
小児けいれんの予後について, 臨床発作, 脳波所見, 精神症状の三点を中心に検索した. 症例は昭和40-52年の東京医科大学神経精神科脳波被検者7652名の中から, 小児けいれん後8年以上に及ぶ棘・徐波複合非消失のてんかん者を32名選択し, そのうち, 挿間性精神症状が出現した13例を挿間症群として, 精神症状が出現しなかった19例を対照群として, 両群に関し臨床面からの比較研究を行なった.
その結果, 挿間症群の中でも特に長期間の棘・徐波複合非消失例は女性に多く, てんかん発作初発は対照群と比較して, より小児期におこる傾向が認められた.初発発作後約10年後に精神症状が出現し, かつ, 前頭・側頭部焦点を有するものが多く, 原発性強直間代発作を示す例には精神症状が出現しにくい傾向が認められた.また挿間症群は二次性強直間代発作と他の発作型の複数出現例に多い傾向がある.強直間代発作の経過は数年間毎年発作が出現すると次の数年は消失し, また再び数年発作が続き消失するというパターンを示した.強直間代発作の年単位の発作間歓期は, 挿間症群では対照群より3.1年短く, 従って難治例が多いことになるが, 当科で治療を開始してから最近の5年間, 無発作の予後は両群とも有意差がない.精神症状の経過として慢性経過をとるものは少ない. 挿間症群中で, 8年以上に及ぶ棘・徐波複合の変動は, 周波数の増加傾向と15-20才の年齢層での持続時間の減少が特徴的といえよう.