抄録
唾液中phenytoin (PHT), phenobanbital (PB) 濃度測定の臨床上の利点を列挙してみると, 1) 血漿中総PHT, PB濃度ばかりでなく, 蛋白非結合形 (free) のPHT, PB濃度を高い信頼性をもって推定出来ること.2) 尿毒症など血漿中アルブミン濃度の低い場合free濃度測定が重要となるが測定操作が複雑である.唾液中濃度測定によれば遙かに簡便にfree濃度が推定出来ること.3) 試料採取が容易であること.4) 試料採取にあたり, 場所的, 時間的制約のないこと.5) 試料の頻回採取が可能で, 薬物速度論的研究の手段として有用なこと.などが挙げられる.
一方欠点としては幼児など非協力的な患者, 意識障害のある場合, 唾液が出にくい場合などには適用出来ず, また服薬後口内をよくゆすがないと薬物が口内に残存することがある.
臨床発作の抑制のみならずsubclinicalなレベルでの脳波所見の改善をも指標の一環として検討すると, てんかん患者の中にはPHTに反応して改善するPHT responderとPBが有効なPBresponderが存在することが見出された.
PHT, PBの治療有効濃度範囲としては, PHT responderではPHT単独投与の場合血漿中総PHT濃度として10~22μg/ml, PB responderではPB単独の場合16~36μg/mlと一応考えられる.今後PHTとPBの両者がともに有効であるdual responderについて, 併用による効果の相加作用の可能性を検討したい.