1980 年 12 巻 2 号 p. 148-152
抗てんかん薬の体液中濃度測定が臨床医の手にとどくようになつて, いわゆる治療有効濃度を臨床てんかん学の側から検討することが, 意味ある課題となってきている.治療有効濃度は, 単剤治療の下にある個別症例を縦断的に追跡した場合に, その治療的意義は最も鮮明となる.多剤併用治療の際に, 有効濃度以下にとどまっているすべての薬物濃度を, 報告された有効濃度に上げることは当を得た治療方針ではない.用量ひいては濃度依存性の副作用だけが相加されて, 中毒症状が招来される.終末寛解状態の際には, 低濃度の薬物が十分効果をしめしている.てんかん発作閾値と治療大有効濃度の関係について, 若干の考察を試みた.