脳と発達
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間脳腫瘍患者における睡眠時の下垂体ホルモン分泌動態
河野 登宮尾 益英
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1982 年 14 巻 1 号 p. 29-35

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抄録

間脳腫瘍患児の睡眠時における下垂体ホルモン濃度 (GH, PRL, LHおよびFSH) を測定し, 生理的なホルモン分泌機構に中枢神経系がどのように関与しているかについて検討した. 対象は鞍上部腫瘍1例, 第三脳室近傍腫瘍4例, 松果体部腫瘍1例の計6例である.
1. 睡眠時の下垂体ホルモン分泌
1) GH. 視床下部に病変の波及していない松果体部腫瘍の1例のみが, 入眠初期の徐波睡眠期に10.0ng/ml以上の分泌ピークを示した.
2) PRL. 6例中1例のみが, 睡眠時の過剰分泌を示し, その分泌様式は基礎値が高く, かつ過大なsleep-related augmentationを示した.
3) Gn.年齢および性発達を考慮して睡眠時のGn濃度を対照と比較すると, 正常分泌2例, 分泌不全3例, 過剰分泌1例であった. なお, 分泌不全3例中, 1例はHCGの高値を認めた.
2. 視床下部に病変を有するものは, なんらかの下垂体ホルモンの睡眠依存性分泌に変調をきたしている. そのうち, とくにGHの異常が高率 (100%) であった. 意識障害を伴う症例の睡眠時の下垂体ホルモン分泌リズムは, 全例にGHの異常が認められた.
間脳腫瘍は, 下垂体ホルモンの分泌障害をもたらすが, 一方, 上行賦活系を障害して意識障害をきたすことがある. 間脳領域の器質的疾患における神経系と内分泌系の相関について考察を加えた.

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© 日本小児小児神経学会
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