脳と発達
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進行性筋ジストロフィー症の発生病理の解明と新治療法の開拓
杉田 秀夫
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1983 年 15 巻 2 号 p. 100-104

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抄録
進行性筋ジストロフィー症の成因はなお明らかではなく, 最近膜異常説が注目されている. 本症は筋萎縮が常に進行する遺伝性ミオパチーであり, 筋蛋白レベルで考えると合成に比し相対的, あるいは絶対的に分解が優位に立っている事が想定される. 筋蛋白の分解には当然蛋白分解酵素が関与するわけであり, Ca依存性中性プロテアーゼ (CANP) 及び各種のリソゾームカテプシンがあげられる. 前者は特に分解の初期段階に働くものと思われる. CANPの活性化には非生理的高濃度のCaイオンの存在が必要であり, 形質膜を通じて細胞外のCaが細胞内に過剰に浸入する必要があり, 膜異常が想定されるゆえんである. デュシャンヌ型においてしばしば認められるopaque線維はCaが高くなっておりCANPは活性化されていると考えられる. CANPは微生物の二次代謝産物であるleupeptin, E-64によりinvitroでは強力に阻害されしたがってこれら低分子阻害剤を治療的な意味で用いる試みがモデル動物について検討されつつある.
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© 日本小児小児神経学会
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