脳と発達
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短絡術後合併症について
大井 静雄松本 悟
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1983 年 15 巻 3 号 p. 199-209

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抄録
水頭症に対する短絡術後の合併症, 特にslit ventricleについて, 122例の小児水頭症よりその病態, その要因を分析し, sli tventricleは小児の脳の機能発育にとって好ましい状態であるのかPさらに, その治療上の問題点はどこにあるのかPという点につき検討した. 水頭症の短絡術後の合併症としてslit ventricleは28例 (22.9%) に発生した. slit ventricleに陥る要因としては, 水頭症の根底となる病態 (中脳水道閉塞では44.4% に発生), initial shuntの時期 (primary hydrocephalusでは93.3%が6ヵ月未満の乳児に発生), 短絡管の圧 (71.5%が低圧管使用後に発生), 水頭症の初発症状から短絡術までの期間 (66.7%は4週以内) が大きく関与し, 術前の脳室の大きさとは無関係であった. 短絡術の長期追跡調査において, 生後6ヵ月未満にslit ventricleに陥った患児は, microcephalicでIQも正常の脳室の大きさを有する患児より低い傾向にあった. slit ventricleの状態は特に乳児において将来microcephalus, 知能発育障害をもたらす可能性があり, 未然にslit ventricleの発生を予防することが大切であると思われる.
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© 日本小児小児神経学会
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