抄録
1歳11カ月女児. 生前にgalactocerebroside β-galactosidase活性の異常低下よりgloboid cell leukodystrophy (以下G. L. D. と略す) と診断され, 剖検にて非典型的なgloboidcellの形態と分布がみられた. 脊髄表面には全長にわたり軟膜を含む深い溝が観察された. 胎生期に出現したG. L. D. の代謝異常では, oligodendroglia細胞表面にgalactocerebrosideやある種の抗原が本来なら多いはずなのに減少していたためと考えられる. その際脳では白質が障害され, 脊髄では本例にみられるように白質の髄鞘形成を抑制したり, 既存の髄質を障害することにより, 白質変性症をきたすものと思われる. 特に胎生期では前述の酵素活性の異常低下と静脈の障害とが脊髄白質実質を低形成におとし, またこの時期のニューロン成分集簇 (aggregation) は完成されていたため神経路は保持され, 相互の神経路間の癒合が不完成だったために脊髄回ともいうべき分葉状態を作ったものと思われる.