1984 年 16 巻 1 号 p. 21-26
1975年より1981年までの7年間に, 帝京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科小児難聴言語外来を受診した, 髄膜炎によると思われる難聴児18例の, 聴覚平衡障害についてしらべた.
結果は以下の通りである.1) 難聴の程度は, 2例を除き90dB以上の高度難聴であった.
2) 幼児期に髄膜炎に罹患した難聴児は, 有意語の減少, 構音の歪化などの言語の障害を示した.
3) 一方向減衰回転検査, カロリックテストにより, 10例に末梢前庭障害を示唆する所見が得られた.
以上の結果より髄膜炎罹患後は, 早期に聴力・平衡の障害の有無を検索し, とくに難聴を認めた時は, 直ちに聴能言語訓練を行う必要がある. また逆に, 髄膜炎罹患後平衡障害をきたした症例は, 難聴の存在を強く疑って対処すべきである.