抄録
言語障害を主徴としたてんかん性脳症の1症例の臨床経過について神経心理学的・臨床脳波学的検討を行った. 言語障害は表出言語の著明な減少と口頭言語の聴覚的理解の障害が特徴であり, いわゆる全失語に類似した. 言語症状の悪化と脳波の全汎性遅棘徐波複合の出現とは明らかな相関があったが両者には時間的なずれが認められ, 発作波の減少が言語障害の改善よりも先行した. 発作時脳波で非定型欠神, 終夜睡眠脳波でelectrical status epilepticus during sleep (ESES) が確認された. 本症例の病態は皮質下病変を基盤にした皮質・皮質下両者の関与する広汎なてんかん性脳症と考えられた. Landau-Kleffner症候群との関連について考察した.