脳と発達
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小児糖尿病における聴性脳幹反応に関する研究
小田 公子村田 良輔一色 玄松裏 修四
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1986 年 18 巻 1 号 p. 29-35

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抄録
インスリン依存性糖尿病 (IDDM) 患児の神経系合併症を調べるために, 聴性脳幹反応 (ABR) を施行し, 糖尿病のコントロールの指標である各種パラメーターと比較検討をした. また実験的にstreptozotocin (STZ) 誘発糖尿病ラットを作製して, ABRの急性期, 慢性期における変化についても検討を加えた. IDDM患児のABRは, 1) 対照群に比べて各波形の分離が悪く, 10年以上の長期罹病者に第III波, 第V波頂点潜時の延長傾向がみられた. 2) 脳波異常との比較では相関がみられなかった.
STZ糖尿病ラットのABRは, 1) STZ投与後3週間目で各波頂点潜時に有意 (P<0.05) な延長がみられ, 特に第V波は最大の延長を示した. 2) 15週間後には第I波, 第III波, 第V波以外は振幅が低下するために波形分離が困難であった. 3) STZ投与後4週間目からインスリン投与により血糖をコントロールしたが, 頂点潜時延長の改善はみられなかった.
以上の結果, 長期間の高血糖状態下においてはABRの各波頂点潜時の延長および振幅低下が認められることから, 脳幹部の障害が存在することが示唆された.
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© 日本小児小児神経学会
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