脳と発達
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Rett症候群
その臨床的研究
長谷川 正子野村 芳子瀬川 昌也
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1986 年 18 巻 4 号 p. 269-279

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抄録
Rett症候群は, 女性のみにみられる上肢の特異な不随意運動を呈する進行性の疾患で, 近年注目をあびてきているが, その病態はいまだ不明である. 本文では自験例5例の臨床的特徴の詳細を述べ, その病態について考察した. 即ちその臨床的特徴は, まず自閉傾向が, 多くは乳児期, 時に幼児期前半より出現する. その後自閉的傾向はうすれ, 知能障害が前面にみられる様になり, 漸次, 知的能力の退行が認められ, 乳児期後半一幼児期に特異な手の常同運動が出現, 歩行は, 寡動様akineticであり, 筋緊張は, はじめは多くは低下, 後に下肢より亢進, 年長例では側彎, 下肢優位の関節拘縮をみる. また全員高度の脳波異常を呈し, 痙攣を必発する. これらの特徴的症状が特異な年齢に出現する事が特徴である. 以上より中枢神経病変は, 特定の神経系あるいは互いに密接な関係をもつ神経系, あるいは神経核の障害に求められると考えられる. したがって病変の主座は, 皮質下, 特に乳児期早期に形態学的に完成し, 機能的に発達の臨界齢を迎える脳幹, 中脳の神経系と考えられる.
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© 日本小児小児神経学会
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