1988 年 20 巻 3 号 p. 242-246
脳血管障害後, 複雑部分発作・高次脳機能障害を呈した12歳女児例を報告した.9歳で膜性増殖性腎炎に罹患し, ステロイド剤のパルス療法中高血圧に伴って全身けいれんが出現, 3カ月後右半身けいれんを認め, X線CT上左半卵円中心後部に低吸収域を, 脳波上も同部に棘波を認めた.以後, 幻視・幻聴・自動症などの複雑部分発作が出現し, 神経心理学的検査では, 左側優位半球病変が考えられた. 電気生理学的検査では, 単発閃光刺激にて左側の側頭・頭頂・後頭部に脳波上photic drivingが出現し, somatosensory evoked potential (SEP) で左側後期成分 (N 32) の消失を認めた. 放射線学的検査では, X線CTで確認されない皮質下梗塞を, magnetic resonance imaging (MRI) で認めた. さらにN-isopropyl-P-[123I] iodoamphetamine静脈内投与によるsingle photon emission computed tomography (IMP-SPECT) で, 左側の側頭・頭頂・後頭部の血流低下が認められ, X線CT・MRIでは予想できない広がりを持っていることが示された. これらの検査は, 臨床症状ともよく対応し, 大脳機能障害を明らかにする有用な方法と思われた.