抄録
自然治癒傾向を示し, アシクロビル投与後に, 白質の病変が生じた, 単純ヘルペス脳炎の2歳男児例を経験した.CT検査では, 皮質の楔型の出血巣や, 脳回の造影剤増強効果がみられ, 2カ月後には両側性に広汎な白質の低吸収が認められた.MRI検査では, 出血巣はT1強調画像で高信号に, 周囲の炎症性変化と白質の変化は, T2強調画像で高信号として明瞭に認められた.このときの髄液蛋白とmyelin basic proteinは有意に上昇し, 白質の変化は脱髄と考えられ, 可逆性であった.この病変の発生には, 単純ヘルペスウイルス感染の白質への進展, 同ウイルスの感染に伴う免疫異常, アシクロビルの副作用などの関与が疑われた.