大阪歴史博物館研究紀要
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河川漁撈と池沼漁撈
淀川と巨椋池の内水面漁撈の比較
伊藤 廣之
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2013 年 11 巻 p. 0019-0032

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抄録

本論文では、淀川水系最大規模の池沼である巨椋池の漁撈との比較をとおして、淀川の河川漁撈の特徴を検討した。淀川の淡水域と汽水域の漁撈について、そこでの漁獲対象、漁具・漁法のあり方を詳述した。つぎに河川漁撈との対比のため、巨椋池のなかの大池を取り上げ、ヘリ・チュウドオリ・マンナカという三つの領域での漁撈について、そこでの漁撈のあり方を詳述した。つぎに、河床・池盆形態、水、水生植物に注目し、淀川と巨椋池の漁撈環境の違いを明らかにしたうえで、漁具・漁法、漁撈知識等に関して、環境の違いにもとづく淀川と巨椋池の漁撈の共通点や相違点を分析し、淀川の河川漁撈の特徴について検討した。その結果、河川における漁撈技術の規定要因として、①川の増水、②汽水の塩分濃度の変化、③魚介の降下・遡上など、河水をめぐる自然現象や、川を生息の場や通り道とする魚介の生態が関わっていることを明らかにした。

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