【目的】酸化ストレスマーカーであるグルタチオンは、運動により変動することが知られている。そのため、スポーツ選手の疲労を把握する手段の1つに用いられている。本研究の目的は、一過性の高強度運動により変動する血中グルタチオンに対する鍼通電刺激の影響を検討することである。【方法】健常成人男性12名を対象とし、鍼通電(EA)群と無刺激対照(CONT)群を設け、低周波鍼通電刺激の影響を検討した。オールアウトまでの漸増運動負荷は自転車エルゴメーターを用い、負荷中の呼吸代謝を記録した。評価は、還元型グルタチオン(GSH)、酸化型グルタチオン濃度/総グルタチオン濃度(GSSG/tGSH)により行った。【結果】呼吸代謝は、両群で有意差は認められなかった。両群間における運動負荷前後でのGSH、GSSG/tGSHの変化量に有意差は認められなかった。各群内においてEA群では、運動負荷直後にGSHが有意に増加し(p<0.05)、GSSG/tGSHは有意に減少した(p<0.05)。一方、CONT群は、運動前後で有意差は認められなかった。【結論】両群間での各グルタチオンの指標において、運動による変化量に有意差は認められなかったものの、EA群では運動負荷前後でのGSH、GSSG/tGSHは、有意な変化を認めたため、鍼通電刺激は運動負荷によるグルタチオンの変動に影響を与えた可能性が考えられる。