抄録
話者が音声の流れをどのように区切って意味理解を果たすかという「音声分節化の問題」は,従来から心理言語学において,特に言語処理や言語獲得の観点から取り扱われてきた。本稿では,この問題が音韻論にいかなる示唆を与えるかという点について考察を加える。そして,「音声分節化の問題」が,1)音素配列制約の心理的実在性に関する検証に役立つこと,2)音韻文法のモデルとしての最適性理論の証拠付けになること,3)言語獲得の観点からモデルの是非(習得可能か否か)を検証できること,などを主張する。検証に用いる言語は人工言語であり,モデルはSTAGE (Adriaans and Kager 2010)である。