本研究では,日本語母語話者と中国語を母語とする日本語学習者を対象に,丁寧な発話態度に関する音声的特徴の違いについて分析し,比較を行った。生成実験では,心理的負荷の異なる2つの状況を設定し,依頼表現を発話してもらった。その結果,心理的負荷の高い発話には,持続時間が長く,F0最大値が小さく,F0レンジが狭いといった音響的特徴が見られた。さらに,「恐縮」の発話態度を表すと考えられる延伸やりきみなど,非流暢性を表す特徴と,気息性の高い声が使用されることが確認された。一方,学習者は異なるイントネーションパターンを示した。発話がどのくらい丁寧に感じるかという知覚実験を行ったところ,学習者と母語話者の反応は類似していた。このことから,学習者は日本語の丁寧な発話の生成方法が母語話者とは異なるものの,知覚の面では母語話者との違いがより小さいことが示唆された。