耳鼻咽喉科展望
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臨床
直達喉頭鏡でのアプローチのみで治癒しえた頸部膿瘍を伴う咽頭腔外魚骨異物の1例
澤井 理華小森 学遠藤 誠加藤 孝邦
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2010 年 53 巻 6 号 p. 415-419

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抄録

頸部膿瘍を合併した咽頭腔外魚骨異物に対し, 喉頭直達鏡でのアプローチのみで異物除去・排膿し治癒しえた1例を経験したので文献的考察を加え報告する。症例は34歳女性でブリ摂食後からの残存する咽頭違和感を主訴に当科に紹介受診となった。初診時体温は37.4度, 左頸部に軽度の圧痛を認め, 咽喉頭ファイバースコピーでは魚骨異物は認めないものの左披裂部の軽度腫脹と左梨状窩の唾液貯留を認めた。血液検査, 頸部CT所見より咽頭腔外魚骨異物, 左頸部膿瘍, 甲状腺炎の合併と診断し同日全身麻酔下手術を施行した。喉頭直達鏡にて展開を行い, 魚骨を確認したため把持鉗子にて異物を抜去し, 頸部圧迫にて刺入部より膿汁を排泄し手術終了とした。腔外異物に対しては最初から頸部外切開で施行したとの報告が多いが, 下咽頭・頸部食道の異物を口内法で摘出しえた報告もあることより, 本症例のように侵襲の少なさを考慮し, 口内法を試みた上で治療困難と判断した場合は躊躇せず外切開に切り替えることも一つの選択肢となりえると考えた。

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