耳鼻咽喉科展望
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臨床
成人型特発性髄液耳漏の1症例
市山 紗弥香谷口 雄一郎小島 博己
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2010 年 53 巻 6 号 p. 420-426

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抄録

今回我々は非常に稀である成人型特発性髄液耳漏を経験したため報告する。症例は83歳男性。数年前より左聴力低下, 耳漏の量が持続するため近医を受診したところ, テステープにて糖陽性であり, 髄液漏の疑いにて佐久総合病院を紹介受診となった。左耳の鼓膜穿孔を認め, また左耳内はやや湿潤していた。側頭骨CTでは中頭蓋窩天蓋の菲薄化を認めたが, 耳小骨や内耳に奇形などの異常は認められなかった。
初回手術では乳突削開を行い, 髄液の漏出の有無を観察したが, 明らかな所見はなく, 上鼓室周囲の炎症による水様性耳漏と判断し, 鼓膜を閉鎖して手術を終了した。しかし1回目手術終了2週間後より, 耳後部の切開部に小瘻孔が生じ, その部位より少量の透明な液の排出がみられた。このためやはり髄液漏があると判断し, 術後1ヵ月目に2回目の手術を施行した。前回不十分であった天蓋周囲の蜂巣を十分に削開し, 念入りに観察をしたところ, 中頭蓋窩のわずかな骨欠損部より硬膜が突出しており, 髄液の間欠的な漏出を認めた。瘻孔部位を小さな結合織を挿入する型でパッキングし, 筋膜と骨パテにて被覆し, さらにフィブリン糊を用いて瘻孔の閉鎖を行った。
術後1年以上経過しているが再発は認められない。

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